COLUMN

2025年3月掲載

大河ドラマで活躍中!バーチャルプロダクションとは?

こんにちは!VPデザイナーのMです。
近年、「VP=バーチャルプロダクション」という撮影手法を用いて、ドラマの撮影が行われるようになりました。
バーチャルプロダクション(以下、VP)とは、リアルセットの背景に映像を映し出し、被写体と同時にリアルタイムで撮影を行う技術のことです。
時代劇におけるVPでは、スタジオに設置したLEDウォールに映像やCGを表示する技術を使っています。

NHKアートでは、大河ドラマ『どうする家康』(放送:2023年)以降、複数の番組制作を通して、リアルタイム合成に適したVP背景用の3DCG制作と撮影現場での立ち会い、運用を行っています。

現在放送中の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』でもVPの手法が多用されています。

物語の目玉となる吉原の大通り「仲の町通り」は、当時の記録や浮世絵を参考にすると、横幅11m、奥行き250mという規模。しかし、スタジオの中に250mの大通りをすべて再現することは不可能です。
そこで、VPを用いて大通りを途中からCGに切り替えています。

ここでは、VPの手法の中でも、LEDウォールに3DCG背景を映し、実写カメラの動きに連動して変化する映像を表示・撮影する、「インカメラVFX」の技術を用いています。
インカメラVFXでは、カメラマンが操作する実写カメラの動きと連動して、リアルセットとの遠近感をあわせてVPのCGのセットをLEDウォールに映し出すことができるため、自然な奥行きでつながっているように見え、大通りのにぎわいや迫力を表現することができるのです。

こちらの画像、どこからがCGかわかりますか?

引手茶屋が並ぶ250mの吉原の大通りをリアルセットとVPで切れ目なく表現
(画像提供:NHK)

正解は、一番手前の灯籠までがリアルセットで、二番目の赤い灯籠以降がCGで再現されたものです!

大道具セットの奥に建てられたLEDウォール
※担当者撮影

NHKアートではリアルセットのデザイン・製作も手掛けていますので、現場ではリアルセットのチームとデジタルチームが協力して、リアルセットとLEDウォールの境界に植栽や起伏に富んだ地形を配置したり、LED側のCGや画像の質感、色をリアルタイムで調整したりしています。
リアルとバーチャルをシームレスに融合させ、できる限りその場で完成した映像に近づけられるように収録を行っています。

20種類もの背景シーンバリエーション

ドラマではひとつのスタジオの中で、場所や時間の設定を次々に変えて撮影するため、設定に合わせて飾りやライティングを変え、さまざまなパターンの背景が必要になります。
放送開始の1年以上前から制作の準備を開始し、セットデザイナーのプランニングや歴史資料、大道具・小道具の設定資料をもとにして、建物や小道具などのCGアセットを作り、これらを組み合わせて、現実世界となるべくつながって見えるようなリアルな空間を作っています。

今回、吉原の大通りだけでも四季、時間帯、天気など、さまざまな場面設定に対応するため、20種類近いバリエーションを制作しました。
大通りを行き交う人々も「デジタルダブル」(CGキャラクター)として、120パターンをCGで作り、最大350人を配置しています。

LEDウォールに映るCGの町並みと「デジタルダブル」の人物たち
(画像提供:NHK)

吉原のVPの他にも、日本橋の広大な商業中心地や江戸市中の町並みの表現など、大掛かりなCG・VFX表現も多用しています。
劇中に登場するCG・VFX・VPの数々の演出にぜひご注目ください、とお伝えしたいところですが、VP担当としては、「どこがCG合成か全くわからない!」と思っていただけるのが理想です。
リアルとデジタルの美術が融合したドラマの世界に、ぜひご集中ください!