COLUMN

22023年5月掲載

あれってどうなってるの?第2弾
“架空の病”を表現する特殊メイクとは

こんにちは。ドラマ番組の美術進行しています、番組美術制作ディレクターのMです!
わたしが担当するドラマ10『大奥』(放送:2023年1月~)の美術にまつわる試行錯誤の裏話をご紹介します。

『大奥』といえば、男女逆転の時代が始まるきっかけとなった、若い男性のみに感染する架空の病、「赤面疱瘡(あかづらほうそう)」。
わたしが担当した「養生所」のセットでは、赤面疱瘡の患者が登場するシーンが特に多く撮影されました。「赤面疱瘡」はその名の通り赤い発疹が特徴ですが、物語の軸となる架空の病気の症状をどのように表現するか、撮影期間は特殊メイク会社の方々と試行錯誤の繰り返しでした。

ドラマ10『大奥』養生所のセット

特殊メイクで表現すればクオリティの高い表現が可能ですが、一人ひとりに特殊メイクを施すとなると、扮装し終わるのに2時間かかってしまいます。赤面疱瘡の患者が100人も出演するシーンもあり、これでは準備に一日かけても時間が足りません。
そこで、進行チームで話し合った結果、同時に多くの患者(役者)に施すことができるオリジナルの“簡易赤面疱瘡”を製作し、クローズアップで撮影するためのハイクオリティの特殊メイクの赤面疱瘡と、シーンに応じて使い分けることにました。これで多くの赤面疱瘡の患者が集まるシーンも、簡易的であるもののクオリティを落とすことなく撮影することができます。

赤面疱瘡の初期、中期、末期の症状の段階も物語上のポイントになるので、症状の差をどうみせればわかりやすくなるか、表現の仕方が重要になります。
症状の進行の様子を撮影するために、簡易的に施せると同時にスピーディーに落とせるようにする必要もあり、その点も製作にあたり苦労しました。

ドラマ10『大奥』第1シリーズの「赤面疱瘡」のメイク。試行錯誤してつくった2番目のもので、実はシーズン1の撮影中につくり方の異なる赤面疱瘡を3パターン用意しました。

『大奥』の美術の裏話、いかがでしたでしょうか。 ご紹介したのはほんの一部。時には失敗することもありますが、それも経験として生かしながら、より良いものを作るために、放送では分からないような細部に至るまで実験と試行錯誤を繰り返しています。
まもなく始まる『第2シーズン』も、ぜひ美術にも注目してご覧ください!次回もお楽しみに!

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