COLUMN

2021年10月掲載

かかせない脇役ー建具の世界はおくぶかいーその2ー

こんにちは。
NHKアート広報担当です!
今回のコラムも前回の「建具―その1―」に引き続き、ググっと建具のおくぶかいおもしろさを紹介します。

かかせない脇役ー建具の世界はおくぶかい ーその1ーは コチラ

ところで、皆さんのお家の障子の紙は真っ白ですか?
最近は和室があるお家が少なくなりましたから「真っ白どころか、障子はないよ」という返事がかえってきそうですね。

土曜ドラマ「みをつくし料理帖スペシャル」(2019年放送/扇屋のセットより)

この写真のセットは、江戸時代の吉原、その中でも大籬という格式の高い娼家という設定のセットです。とても豪華ですね。そして、障子もとてもきれいです。
このように大河ドラマに出てくるような江戸時代のセットや、連続テレビ小説に出てくる昭和時代のセットでは障子を欠かすことはできません。
セットでは、その障子の様子を見れば、そこに暮らす人がどのような立場や身分の人を設定しているのかが分かります。

その違いはまず紙からです。セットで使う障子紙は主にこの2種類です。
この障子紙は、テレビセットのためにNHKが開発した特別なものなんです。

え、「真っ白じゃないじゃん」ですよね。そうなんです。
セットで使う「真っ白に見える障子紙」は、ふつうの明かりで見ると薄い緑です。しかし、スタジオの照明はふつうの明かりよりももっと明るく強いので、ふつうの明かりで見ると白い紙は、照明でギンギンに光ってしまいます。
そこで、NHKデザイン部門の皆さんが開発したのが、この緑の障子紙です。この緑の障子紙を貼ると、張り替えられたばかりのとてもきれいな障子が表現されます。真っ白な障子で生活するのは、たとえば豊かな商家など比較的ゆったりと生活する立場の人たちだということが想像できますよね。

外に面した障子が土ぼこりをかぶってすすけたり、長く掃除がされないで埃で汚れたり、そんなときには茶色の紙を使ったり、その上、「汚し」(よごし)を施して、さらに使い込まれている感じを出していくんです。
また茶色の紙は茶室のセットでもよくつかわれていますよ。

この写真は汚しをかけられた障子です。いま貼ったばかりなのに、ものすごい時間が経っているように見えますよね。
そうです、汚しは「経年変化」。経った時間や状況を表現していく技術です。
「汚し」については、これもとっても深いので、また造画やメイクなど、違うテーマのコラムで紹介します。

建具、ほんとうに深いのでまたズンズン奥まで来てしまいましたが、もう一つだけ紹介させてください。

建具を見るポイント、それは襖の引き手など金具の部分です。

色も形も絢爛豪華な引き手、しぶーい引き手。いろいろありますね。
障子の紙と同じように、この部分を見るとドラマの中でそこで暮らす人たちの設定が見えてきます。
障子紙だけでなく、このような引き手やガラスの表現などNHKの皆さんがテレビセットのために考えて独自に生み出したアイディアが、建具にはたくさん詰まっています。

建具は出演者の後ろに必ず映ります。
出演者の演技や、建具や衣裳、そしてセット全体でそのドラマの世界観を楽しんでもらえるとうれしいです。
そしてそのときには「お、ここらへんに工夫がつまっているのかも!」なんて想像してもらえると、さらにうれしいです。

さて次回は建具の花形登場!
襖絵となる障壁画の世界をまたおくぶかく紹介したいと思います。

次回のCOLUMNもお楽しみに!


NHK大河ドラマ『真田丸』(2016年放送/大阪城のセットより)