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被災地の文化財修復活動

活動主旨及び内容

2011年3月11日に発生した東日本大震災による大津波は、地域の文化を支えてきた文化財にも甚大な被害をもたらしました。文化庁と独立行政国立文化財機構が中心になって行われた文化財レスキューでは、日本博物館協会、国立科学博物館など日本全国の博物館関係者が参加して、被災資料の救出が行われました。
被災した場所から安全な場所へ移動され「一次レスキュー」された資料は、安全な場所で内部に染みこんだ劣化要因を取り除く安定化処理などの「二次レスキュー」が行われています。

江戸時代より気仙地方で行われ、明治時代中期に隆盛を極めた地芝居のひとつである「高田歌舞伎」は、戦後、他の地芝居が廃れていく中で、女歌舞伎として装いを変え、最後まで残り、1989年まで公演活動が行われました。
陸前高田市立博物館には、簪(かんざし)や鬘(かつら)など、様々な工夫を凝らして舞台を造っていたことが窺える「高田歌舞伎」の資料が収蔵されていました。
その中から救出された鬘18枚、甲羅1枚計19点の修復先を探していた東京国立博物館から弊社にご相談があり、修復安定化の支援を行っています。
2013年12月の修復安定化処理作業開始以来、年間2~4枚のペースで修復しています。


修理前の状態

修理後の状態


救出された鬘は全体の毛髪がほつれ、傷みやつれた状態になっています。それらの鬘を解いて洗浄し、艶が得られるよう椿湯を塗布するなどの処置を行ってから毛髪を結う必要があります。
これらの鬘は経年変化を感じさせる風合いを残すよう、艶を抑え、全体的に汚しをかけてなじむように調整して仕上げています。


髪を支える地金

洗浄

結い


弊社では番組美術としての鬘でなく、文化財の鬘の修理に初めて携わりました。文化財として鬘が意味することについて皆様との協議を重ねて理解を深めながら、今後もこれまで培った髪結いの技術を救出された文化財の再生に役立ててまいります。


<2013年1月>
鬘が保存されている陸前高田市にて修復調査

<2013年12月>
鬘2枚の修復安定化処理作業を開始
~綺麗に結い直すだけでなく、経年の風合いを残すことを念頭に行う

<2014年12月>
鬘4枚の修復安定化処理作業を開始

<2015年>
・「3.11大津波と文化財の再生」特別展(東京国立博物館)にて2013年修復の鬘を展示
  展示会の詳細はこちら http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1692
・「文化財を守り伝える力~大災害と文化財レスキュー~」(宮崎県総合博物館)にて2013年修復の鬘を展示
  展示会の詳細はこちら http://www.miyazaki-archive.jp/museum/cgi/news/document/news/2015/010701/index.html

出典:「大津波被災文化財保存修復技術連携プロジェクト~安定化処理」
(津波により被災した文化財の保存修復技術の構築と専門機関の連携に関するプロジェクト実行委員会、公益財団法人日本博物館協会、ICOM日本委員会)