TOP > 業務案内 > tvart事例一覧 > 事例


tv art事例

一覧へ戻る

大河ドラマ「軍師官兵衛」美術進行・美術制作及びVFX制作



「有岡城の土牢」内観セット

2014年1月から放送された大河ドラマ「軍師官兵衛」。戦国の乱世を見事に生き抜いた、黒田官兵衛の生涯が描かれました。
このドラマには「本能寺の変」や「有岡城の土牢」、「高松城の水攻め」など歴史的なシーンの印章深いセットが多く登場します。
弊社は、番組演出者の意向をNHKのデザイナーや技術の方々と協議しながら形にしていく業務を担っています。本ドラマでも、ロケのための屋外セットやスタジオのセット、衣裳、小道具などリアルな美術のみでなく、デジタルの美術であるVFX映像の制作も含めた美術の制作・進行を担当しました。
ストーリーの中で重要なポイントになる「有岡城の土牢」はそのリアルな迫力を体験できるよう、NHKスタジオパークで開催された企画展においても展示されました。


写真

「有岡城の土牢」外観セット

写真

「姫路城の台所」セット

写真

「福岡城・光の隠居所」セット


写真

VFXにより完成した姫路城のカット

写真

ロケで撮影された実写画像

写真

VFXによる「高松城の水攻め」完成カット

写真

「高松城の水攻め」のカットを制作するための水のシミュレーション制作画面


<美術ディレクター>

私たち美術ディレクターは、デザイナーの描く美術セット図面や写真イメージ、キーワードを元に、番組制作者やデザイナーと議論を重ねながら美術を制作・進行していきます。
そのように形にしていく美術セットの中でも、「有岡城の土牢」は、特に制作に力を入れ制作したセットのひとつです。荒木村重に翻意を促すため有岡城を訪れた官兵衛が逆に捕らえられ監禁されてしまった「有岡城の土牢」。村重の「地獄へおとそう」という迫力を伝えたいというデザイナーの意向を形ににするため、水の雫が落ちるイメージまで納得できるよう時間をかけて作りました。
この「軍師官兵衛」の美術は全体的に「汚し」にこだわって制作しています。経年を表現する汚しだけではなく、初回の姫路城のシーンでは「無骨な土っぽさ」をロケだけではなく、スタジオでも表現できるよう風化した味わいを出す汚しを施しました。

大河ドラマは主人公の成長や時代の進行というストーリーはもちろんですが、主人公とともに大きく変わっていく大掛かりな美術セットや衣裳も見どころです。それらの美術は、デザイナーや私たちだけでなく、ロケ地地元のご協力者の皆さんや、小道具・衣裳・造園などの専門家との協働作業によって創り出されます。
これからもドラマの舞台になるその土地や時代の空気感を作りだせるよう、時代考証など勉強を重ねていきたいと考えています。

担当:番組美術部 ドラマ番組 西本孝司

<VFXデザイナー>

NHKの番組において、VFXは2011年に放送されたスペシャルドラマ「坂の上の雲」で注目され、その後の大河ドラマでも多く用いられるようになってきています。
私たちNHKアートは、NHK技術陣がディレクションするVFXチームの一員として、大河ドラマなどのCG・VFXを制作しています。
この「軍師官兵衛」のVFX制作にあたっては2013年の9月から汎用モデルの制作を開始し、11月から2014年12月まで様々なシーン制作を行いました。
大河ドラマでは合戦シーンのように広大な土地が必要な場合や、現存しない城を描く必要があったり、雨や雪など天候の表現など、セットだけでは表現できないショットが多く有ります。またエキストラでは賄えない程の大人数の兵士や農民が必要なショットもあります。
VFXはそのようなショットに対してCGのオブジェクトや実写素材映像、現場で撮影した映像を幾重にも『合成』し、あたかもそこに実在するかのような画面を作り上げることを目的としています。
「軍師官兵衛」で特徴的なシーンとして「備中高松城の水攻め」があります。これは物語中盤の非常に重要なシーンでした。
官兵衛たちが高松城の周りを取り囲むように堤を普請するのですが、その堤の一部をオープンセットで組み、セット以外の部分をすべてVFXで表現する必要があり、VFXチームとしても難易度の高いショットがいくつもありました。
VFXショットの制作にあたっては、まず実際に備中高松城のあった場所、現在の岡山県岡山市へ取材に行きました。地形的な特徴やスケール感を僕らが実際に肌で感じつつ、そこで撮影した写真素材と、実際に撮影が行われた栃木県の鉱山の地形との2D的、あるいは3D的な整合性をとって制作していきました。
備中高松城は現存していませんが、VFXチームで様々な資料や復元図を参考にモデリングし、現在の地形から推測される当時の風景と合わせ込みを行いました。ロケ地が高松の堤跡地と似ていたこと、さらにそこに美術チームによるリアリティのあるセットが組まれたおかげで、我々の合成作業も順調に行うことが出来、おそらく当時の備中高松城とその周辺の様子にかなり近いものに仕上がったのではないかと思っています。

CGの技術のみでリアリティのある映像を創り上げることは非常に難しいというのが正直な実感です。実際に組まれたセット空間を”補いながら”セットだけでは 実現不可能な場面を創り上げること、さらに空気感や温度感、臨場感など、現実以上の現実感を得られるような映像演出を付け加えること。それがVFXの役目ではないかと思っています。

だからこそ、これからも”現実感とはなにか”を追求し、創造する力を養い、人の感情を揺さぶるような映像作りをVFXという手法によって表現していきたいと思っています。

担当:デジタルデザイン部 CG/VFXプロダクション 本多冬人